定義
ヨーガ・スートラ 1.9 は、想像(ヴィカルパ)を定義する一節です。
原文
शब्दज्ञानानुपाती वस्तुशून्यो विकल्पः
śabda-jñānānupātī vastu-śūnyo vikalpaḥ
シャブダ・ジュニャーナーヌパーティー・ヴァストゥシューニョー・ヴィカルパハ
逐語分解
- シャブダ(śabda/शब्द) : 言葉、音声
- ジュニャーナ(jñāna/ज्ञान) : 知、認識
- アヌパーティン(anupātin/अनुपातिन्) : 従っていく、後を追う
- ヴァストゥ(vastu/वस्तु) : 実在するもの、事物
- シューニヤ(śūnya/शून्य) : 空の、欠いた
- ヴィカルパ(vikalpa/विकल्प) : 想像、分別
和訳
想像とは、言葉による知に従うだけで、実在する対象を欠いたものである。
解説
言葉が先にあり、実体が後にない、それがヴィカルパです。
「兎の角」「石女の子」のように、言葉としては成り立ちますが指すもの(実体)が存在しない観念のことです。
古来の註釈はこうした例で説明してきました。
ここには、言葉というものへの鋭い洞察があります。人は言葉を持つことで、存在しないものについても考えられるようになりました。例えば抽象名詞であらわされるものをイメージするとよいでしょう。
それは想像力の源であると同時に、実在から離れる道でもあります。パタンジャリはこれを、心のはたらきの一種として冷静に数え上げます。
なお、ヴィカルパは 1.5 のクリシュタ/アクリシュタの区別に照らせば、必ずしも悪ではありません。詩も物語も、この力の産物です。問われるのは、それが苦をもたらす方向にはたらくかどうかです。
関連するスートラ
- YS 1.8 : 実在を取り違える誤認との違い
- YS 1.5 : 煩わしいもの/そうでないものの区別
🔗リンク
ヴィカルパ(vikalpa/विकल्प)
シャブダ(śabda/शब्द)
ヴァストゥ(vastu/वस्तु)