Point004 肩甲帯
肩甲帯は上半身の“腕の土台”です。
鎖骨と肩甲骨は最も体感しやすい2つです。ヨーガだと肩周りの安定に直結する部分になります。
肩甲帯(Shoulder Girdle)
概要
肩甲帯(Shoulder Girdle)は、上肢(腕)を体幹へつなぐ骨格です。
肩甲帯は腕の自由な動きを可能にする一方で、高い可動性と安定性を両立する役割を担っています。
ヨーガでは、ダウンドッグやチャトランガ、逆転のポーズ、アームバランスなど、多くのアーサナで肩甲帯の働きが重要になります。
構成要素
肩甲帯は主に2つの骨から構成されます。
| 骨 | ポイント |
|---|---|
| 鎖骨 | 胸骨と肩甲骨をつなぐ“ハンガー” |
| 肩甲骨 | 背中に浮く三角プレート |

左右一対存在し、胸骨と上腕骨を介して上半身とつながっています。
関節
肩甲帯には重要な関節・機能的関節があります。
| 関節 | ポイント |
|---|---|
| 胸鎖関節 (Sternoclavicular Joint) | 鎖骨と胸骨をつなぐ唯一の骨性連結。 腕の動きは必ずここにも伝わります。 |
| 肩鎖関節 (Acromioclavicular Joint) | 鎖骨と肩甲骨(肩峰)をつなぐ関節。 肩甲骨の細かな調整を担います。 |
| 肩甲胸郭関節 (Scapulothoracic Articulation) | 実際の関節ではありません。 肩甲骨が肋骨の上を滑るように動く機能的関節です。 ヨーガでは最も重要な部位の一つです。 |
主な動き
肩甲帯には次の運動があります。
| 運動 | ポイント |
|---|---|
| 挙上(Elevation) | 腕を現在よりも高い位置に持ち上げること。 |
| 下制(Depression) | 下方向へ引き下げる動きのこと。代表的な例は、肩をすくめた状態からストンと腕を下げる「肩甲骨の下制」です。 |
| 外転(Protraction) | 身体の中心軸から手を外側に遠ざける動きのこと。 |
| 内転(Retraction) | 手を外側から中心に寄せる動きのこと。 |
| 上方回旋(Upward Rotation) | 腕を横や前から上に挙げる際、肩甲骨が外側へスライドしながら上方へ回転する動きのこと。 |
| 下方回旋(Downward Rotation) | 主に腕を下ろしたり、背中に手を回したりする動きに伴う肩甲骨の内下方向への回転のこと。 |

🧘🏻♀️ヨーガとの関係
肩甲帯は多くのアーサナで働きます。例えば上の図にもあるように、ダウンドッグ、チャトランガ、バカーサナ、シルシャーサナなどでは肩甲帯が安定することで肩関節への負担が減り、腕全体で体重を支えられるようになります。
🐻ワンポイント
- 肩甲帯は、肩甲骨を背中に強く寄せて固めれば安定する、というものではありません。腕の動きに合わせて肩甲骨が肋骨の上を滑り、適切に回旋することで、可動性と安定性の両方が生まれます。肩甲骨は「固定する」のではなく、動きながら安定する、と押さえましょう。
- 肩甲骨は、止めるよりも「正しく動かす」ことが大切です。
- 肩甲帯は、上肢と体幹をつなぐ土台です。
- 鎖骨は、肩甲骨を体幹から適度に離して支える支柱です。
英語表記について
肩甲帯用語の使い分け
| 英語 | 日本語 | 用途 |
|---|---|---|
| Shoulder Girdle1 | 肩甲帯 | ◎ 現代解剖学・理学療法・スポーツ医学・ヨーガ解剖学で最も一般的 |
| Pectoral Girdle2 | 肩甲帯 | ○ 比較解剖学・動物学・古い教科書でよく見られる |
| Shoulder Complex3 | 肩複合体・肩関節複合体 | ◎ 肩甲帯+肩関節を含めた機能的ユニット |
※アメリカ発音とイギリス発音
単語そのものが別物になるほどではありませんが、母音と語末の r の有無に差が出ます。
特に目立つのは、アメリカ英語では r を発音し、標準的なイギリス英語では母音の後の r を通常発音しない点です。
| 英語 | アメリカ英語 | イギリス英語 |
|---|---|---|
| Shoulder Girdle | /ˈʃoʊldər ˈɡɝːdəl/ | /ˈʃəʊldə ˈɡɜːdəl/ |
| Pectoral Girdle | /ˈpɛktərəl ˈɡɝːdəl/ | /ˈpektərəl ˈɡɜːdəl/ |
| Shoulder Complex | /ˈʃoʊldər ˈkɑːmpleks/ | /ˈʃəʊldə ˈkɒmpleks/ |
カタカナで無理に差を表すなら、
- 米:ショウルダー・ガードル
- 英:ショウルダ・ガードル
ですが、日本語表記ではどちらも「ショウルダー・ガードル」で十分です。参考までに骨の名称の発音の違いを一覧にしておきます。( → 解剖学用語の英語発音)
解剖学でよく使う骨及び関連語
| 英語 | 日本語 | アメリカ英語 | イギリス英語 | 主な違い |
|---|---|---|---|---|
| Clavicle4 | 鎖骨 | /ˈklævɪkəl/ | /ˈklævɪkəl/ | ほぼ同じ |
| Scapula5 | 肩甲骨 | /ˈskæpjələ/ | /ˈskæpjʊlə/ | 中央母音がやや異なる |
| Humerus6 | 上腕骨 | /ˈhjuːmərəs/ | /ˈhjuːmərəs/ | ほぼ同じ |
| Sternum7 | 胸骨 | /ˈstɝːnəm/ | /ˈstɜːnəm/ | 英では r を発音しない |
| Acromion8 | 肩峰 | /əˈkroʊmiən/ | /əˈkrəʊmiən/ | oʊ / əʊ の違い |
| Coracoid Process9 | 烏口突起 | /ˈkɔːrəkɔɪd ˈprɑːses/ | /ˈkɒrəkɔɪd ˈprəʊses/ | process の母音が異なる |
| Glenoid Cavity10 | 関節窩 | /ˈɡliːnɔɪd ˈkævəti/ | /ˈɡliːnɔɪd ˈkævəti/ | ほぼ同じ |
| Glenoid Fossa11 | 関節窩 | /ˈɡliːnɔɪd ˈfɑːsə/ | /ˈɡliːnɔɪd ˈfɒsə/ | fossa の母音が異なる |
🧸関節窩について
関節窩にはGlenoid CavityとGlenoid Fossaの2通りの表現があります。なぜ2つあるかと言えば、これは fossa と cavity の意味の違いによります。
Fossa
ラテン語で
「くぼみ・窪地」
という意味です。例えば
- Infraspinous Fossa(棘下窩)
- Supraspinous Fossa(棘上窩)
- Olecranon Fossa(肘頭窩)
など、解剖学では非常によく出てきます。
Cavity
こちらは
「空洞・受ける空間」
という意味です。肩甲骨の関節窩は
「上腕骨頭を受ける関節面」
という機能を表すため、Glenoid Cavity という表現が一般的になりました。
現在の医学論文では Glenoid Cavity の方がやや多く見られます。一方で
- Gray’s Anatomy(解剖学の古典でありバイブル)
- Netter(解剖学のバイブル)
- 古い解剖学資料
では Glenoid Fossa も普通に登場します。つまり、
どちらも正しい解剖学用語で、同じ部位を指します。
🦴参考例文
🌟これは絶対覚えたい!
英文: The shoulder girdle is formed by the scapula and the clavicle.
和訳: 肩甲帯は、肩甲骨と鎖骨によって構成されています。
関節も含めた例文
英文: The clavicle connects the shoulder girdle to the sternum at the sternoclavicular joint.
和訳: 鎖骨は、胸鎖関節で肩甲帯を胸骨につないでいます。
動きも含めた例文
英文: During arm elevation, the scapula rotates upward and moves smoothly over the rib cage.
和訳: 腕を上げるとき、肩甲骨は上方回旋し、胸郭の上を滑らかに動きます
脚注
- ショウルダー・ガードル/ˈʃoʊldər ˈɡɝːdəl/(米)
- ペクトラル・ガードル/ˈpɛktərəl ˈɡɝːdəl/(米)
- ショウルダー・コンプレックス/ˈʃoʊldər ˈkɑːmpleks/(米)
- クラヴィクル ※ラテン語 clavicula(小さな鍵)が語源です。
- スキャピュラ ※「スカプラ」と読む人もいますが、英語では「スキャピュラ」に近い発音になります。
- ヒューマラス
- スターナム
- アクロウミオン
- コラコイド・プロセス
- グリーノイド・キャヴィティ ※多くの現代解剖学書・臨床医学・整形外科で使われます。現在はこちらが一般的です。
- グリーノイド・フォッサ ※古い解剖学書や一部の教科書では現在も使われています。ラテン語の流れを強く残した表現です。