ISKCON(クリシュナ意識国際協会)

定義

ISKCON(International Society for Krishna Consciousness/クリシュナ意識国際協会)は、クリシュナへの信愛を世界に広めることを目的として、1966年にニューヨークで設立された宗教団体です。


概要

ISKCONは、ハレー・クリシュナ運動(Hare Krishna Movement)の通称でも知られる、ヒンドゥーの信愛の伝統に立つ団体です。1966年7月13日、A・C・バクティヴェーダーンタ・スワミ・プラブパーダによってニューヨーク市で設立されました。

教団はガウディーヤ・ヴィシュヌ派の伝統に属し、クリシュナを最高神とする信愛(バクティ)を中心に据えています。実践の柱となるのは、ハレー・クリシュナ・マントラの詠唱、菜食、聖典の学習と頒布です。教団の精神的・運営的な本部は、インドの西ベンガル州マーヤープルに置かれています。


設立の経緯

創立者プラブパーダ(1896–1977)は、カルカッタに生まれ、ガウディーヤ・ヴィシュヌ派の師バクティシッダーンタ・サラスヴァティーの系譜を継ぎました。1959年に出家(サンニャーシン)の位を受け、チャイタニヤの教えを西洋へ伝えるための渡航を準備します。

1965年、69歳のとき、貨物船でアメリカへ渡り、翌1966年、ニューヨークの一角でISKCONを設立しました。1960年代の社会的動揺のただ中にあった若者たちのあいだに信奉者を得て、運動は北米・ヨーロッパへ広がっていきます。1968年には、ビートルズのジョージ・ハリスンの支援を受けてイギリスに拠点が築かれました。


古い伝統の、新しい担い手

ISKCONは「新しい宗教運動」と分類されることがありますが、その内実は古い伝統の継承です。1960年代の西洋には新しく現れたものであっても、その信仰は16世紀インドに育まれた信愛のかたちの、新たな担い手とみなすことができます。

すなわち ISKCONは、16世紀の聖者チャイタニヤ・マハープラブに始まるガウディーヤ・ヴィシュヌ派を、20世紀に世界へと広めた存在です。クリシュナ信仰そのものの歴史的背景や、他のヴィシュヌ派諸伝統との関係については、バクティの項目で詳しく扱います(→バクティ:ISKCONとさまざまなバクティの伝統)。


新宗教運動としての論争

ISKCONは古い伝統の担い手の側面があることは前項で書いた通りですが、新宗教としての側面も見逃すことはできません。さらに、その活動の歴史のなかで、いくつかの深刻な問題や論争にも直面してきました。辞典として、これらを事実として記しておきます。

創立者の死後の混乱

1977年のプラブパーダの死後、指導権をめぐる対立から教団に亀裂が生じ、離反や除名に加え、麻薬取引・性的不品行・殺人の疑惑を含むスキャンダルへと発展した例があります。米国ヴァージニア州のニュー・ヴリンダーヴァン共同体では、有力メンバーが恐喝罪で、別の信者が敷地内での殺人罪で有罪となり、同共同体は1987年に破門されました(のち1998年に再加入)。

グルクラ(寄宿学校)における児童虐待

ISKCONは、1970年代から1980年代にかけて、主に米国とインドの寄宿学校で、子どもたちに広範な性的・身体的虐待が加えられたことを公式に認めています。教団は1988年に児童保護局を設置し、2000年代には500人を超える元メンバーが被害を申し立て、ISKCONは総額約950万ドルを支払って謝罪しました。ただし、被害者の多くはこの対応を十分とは受け止めておらず、さらなる措置を求める声が続いています。

今日では、虐待の温床となった条件、例えば子どもを親から引き離すこと、経験の浅い教職員の配置、核家族的な生活の妨げなどは、積極的に避けられるようになっているとされています。

※ この他、教義解釈や他宗派との関係をめぐる論争、教団内部の資産・後継をめぐる法的係争、日本における20世紀末の強烈な布教問題なども多く伝えられますが、本辞典では信頼できる第三者資料で確認できた事項に記述をとどめています。


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